Works
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2019.11.18
どこか懐かしさを覚えるような味のある1坪タイプの戸建ての浴室で、経年による劣化があるものの、お風呂好きのお施主さまによって大切に使われてきたのだなという印象を持ちました。
お施主さまのご要望として、夫は今の高い天井を低くしたくない。妻は年を重ねても掃除の楽さより、ホテルのバスルームのようなスタイリッシュな浴室でゆったりバスタイムを過ごしたい。とのこと。
ご夫婦ともに、老後の暮らしの中で何に重点を置かれるかを考えた際に、「お風呂で過ごす時間を快適にしたい」という想いに焦点を合わせていらっしゃいました。
当初はメーカーのシステムバスにされるか、もしくはホテルのような浴室空間にする在来工法にされるかで悩まれていらっしゃいましたが、在来工法案は他リフォーム会社から一様に「やめた方がいい」「在来はやっていない」などと拒まれてしまったそうです。
お話をうかがうごとに、お二人にとって大好きな空間で過ごす「喜び」を感じていただくお手伝いをしたいという気持ちになり、システムバスでは実現できないこだわりを組み入れた、在来工法の浴室空間を提案させていただきました。
1坪という限られた空間の中で、今回はTOTOの優れた設備機器のパーツを一から組み直し、「現代の新しい在来工法」を作り上げるというコンセプトで設計作業を行い、更にその空間の中で、XYZ方向に間接照明による光の軸を設け、限られた空間にリズムと広がりを持たせるよう試みました。
【照明】
湿度が高く、温度差も激しい浴室空間に相反する繊細なLED照明器具の選定にはかなり苦労した。国内の照明メーカーは屋外用の照明ですら、浴室内での使用は保証も提案ができないとのことで断念。さらに調光および調色機能を持たせたかったため、国内の照明メーカーでは選択肢がなく、施主さまに相談・ご承諾の上、既に内装で頻繁に使用しているフィリップス社のHueライトリボンを採用し、電気系統の部分は天井裏に隔離した上で、発光部分を念のためにクリアのシール材で覆い、原始的だが有効な防水処理を施した。
【浴槽】
TOTO製の高級浴槽「ネオエクセレントバス1600」を採用。
カタログ以上に高級感のある人工大理石製の浴槽が、浴室空間の主役として存在感を発揮。
【壁面・床の石目調タイル】
トラバーチン調のテクスチャーで、600×300の大判サイズの石目調タイルを採用し、石張りの高級感を演出。
1枚あたり約4kgと重量があるため、左官職人が渦を描くように下から順にじっくり時間と手間ひま掛けて施工。
【シャワー】
高性能なオーバーヘッドシャワーを有するシャワーバーを浴室ドアを開けた正面に配置。
配管の納まるPS部分には、オイスターグレーの石目タイルを張り、さらにその両サイドのY軸方向に間接照明を設け、シャワーコーナーをアクセントウォール化しつつも周囲との調和を図った。
【排水】
見た目以上に大変だったのは排水の処理で、排水ユニットの下でミニマムながらもとても合理的に排水管が納まっている。
【アクセサリー】
将来的な安全性も考慮し、手すりを2カ所設けたが、空間のイメージを損なわないよう、TOTO製のシルバーメタル調のインテリアバーを採用した。
お施主さまの期待に応えるために、これまでの経験値による安全策に加え、お施主さまにもチームの一員として加わっていただき、一緒に進めることで、新しいことに挑戦しつつもすべての問題をクリアすることができました。